2020年1月3日金曜日

2/14,15 第13回小林真理声楽マスタークラスのお知らせ&レポート(協会主催事業)

毎年恒例となっております、ストラスブール音楽院教授の小林真理先生による声楽マスタークラス、2020年の開催日が決定いたしました。
本場フランスでも高い評価を受ける小林先生の明晰かつエネルギーに満ちたレッスンを、この機会にぜひ一度ご体験ください。対象はプロを目指す声楽家の方やアマチュアの方まで、幅広く対応いたします。なお今回は、レッスンを受講された方ならどなたでも出演できるコンサートも予定しております。ご興味をお持ちの方は、ぜひお早めに事務局までお問い合わせください。

日時
2020年2月14日(金) 会場未定
2020年2月15日(土)  芸術家の家ホール(JR目黒駅東口より徒歩7分)

対象
受講生
- 声楽を専門的に学ばれている方
- フランス歌曲やフランス語オペラを学ばれたい方
- 声楽分野でフランスへの留学を希望されている方
- フランスにおける声楽教育を体験されたい方
- 声楽の初心者やアマチュアで学ばれている方

聴講生
-専門的な知識の有無にかかわらず、興味のある方はどなたでもご見学可能です。メールにて事務局までお申し込みください。
-レッスンの妨げにならない範囲での入退場は自由です(お申し込み後に当日のタイムテーブルをお送りいたします)。

レッスン形式
- 原則としてお一人につき1時間の個人レッスンとなります。上記の日時内でご希望の時間帯を、お申し込み時にお知らせ下さい。お一人で2時間続けての受講や、複数枠の受講も可能です。
- 受講曲目は自由です。2、3曲程度ご用意下さい。事前に講師ともご相談いただけます。
- 伴奏者はご自分でお連れいただくか、協会事務局からのご紹介も可能です(紹介の場合の奏者への謝礼は、1枠につき5,000円となります)。
-受講生は、2月15日夕方から行われる試演コンサートにご参加いただけます(希望者のみ)。費用はかかりません。
-受講生は、他の受講生のレッスンも自由にご見学いただけます。

参加費
-受講料 : 22,000円(複数枠をお申し込みの場合、2枠目からは各18,000円)
-聴講料 : 2,000円(日仏現代音楽協会会員は1,500円)

お申し込み・お問い合わせ
日仏現代音楽協会事務局 tokko.chene@gmail.com


講師プロフィール
小林真理(日仏現代音楽協会名誉会員)
鎌倉市生まれ。3歳よりピアノを始め、10歳より中村浩子女史に師事し声楽を学ぶ。
1979年東京芸術大学音楽学部声楽科を卒業、同大学院修士課程に進み、1981年文化放送音楽賞受賞、第1回日仏声楽コンクールに入選、フランス音楽をより深く学ぶために留学を決意し、1982年フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に入学、レジーヌ・クレスパン女史に師事、1987年同音学院のオペラ科を終了、1989年にはウィリアム・クリスティ氏の指導する同音学院の古典声楽科のクラスを1等賞を得て終了する。パリ国立高等音楽院に在籍中の1983年頃より数々の国際声楽コンクールにて受賞(1984年パリのフランス歌曲国際コンクールでフォーレ賞、1988年クレルモン・フェランのオラトリオ・リート国際コンクールではリタ・シュトライヒ・記念大賞)この頃よりバロックから現代音楽に至る幅広い演奏活動を始める。
1993年にはその後進学した東京芸術大学博士課程において博士論文『オリヴィエ・メシアンの歌曲研究ーハラウイを中心にー』を書き、博士号を収得する。
コンサート活動においてはピエール・ブーレーズの指揮でシャトレ劇場でハリソン・バートウィッスルの〔メリヂアン〕のフランス初演、フランス国立管弦楽団、フィルハーモニック・オーケストラと共演、オランダのコンセルトゲボー・ホールにてシェーンベルクの〔4つのオーケストラ歌曲作品22〕、佐渡裕指揮でオーケストラ・ラムルーとマーラーの交響曲第2番、現代音楽作曲家の初演は数多く、アンサンブル・アンテルコンタンポランと数度共演、ロストロポーヴィッチの指揮で小林真理のために書かれたピヨートル・モスの〔スターバート・マーテル〕、最近ではフィリップ・ルルーの新作をロレーヌ国立管弦楽団とフランスとドイツで初演、ヨーロッパのみでなく、アメリカ、東欧、オーストラリアにてもソリストとして活躍している。オペラの分野では ジェフリー・テート指揮によるベルクの〔ルル〕の女流工芸家役、プッチーニの〔蝶々夫人〕のスズキ役、モーツァルトの〔コシ・ファン・トゥッテ〕のドラベラ役、ヴィヴァルディの世界初演〔真実の証〕のルステーナ役などを演じている。
CD録音も多数に及び、モーツァルトの〔レクイエム〕、〔マニュエル・ロ-ゼンタール歌曲集〕、〔20世紀の作曲家の編曲による世界の民謡〕などがあり、最近では、フランスを代表するサクソフォン奏者、クロード・ドラングルとの〔japanese love songs〕、メシアンの〔ハラウィ〕などがある。
1999年にフランス国家教授資格を得て現在ストラスブール地方音楽院で声楽の専任教授を勤め、ニースのアカデミー他、各国でマスタークラスを行い、後進の指導にも情熱をそそいでいる。

◯受講生の方からのレポート
昨年小林真理先生のマスタークラスを受講された方々から、レポートをお寄せいただきました!参加をご検討されている方はぜひご一読ください。

《小林真理声楽マスタークラスを終えて》
毎年、真理先生のマスタークラスを心待ちにしております。
真理先生の発声の指導は、呼吸の正しい仕方から体の使い方、歌う際の息の使い方など、大変綿密に、こちらが納得するまで熱心に指導して下さいます。
大学で声楽を学んだにもかかわらず、きちんと出来てなかった事が沢山あり、新たな気持ちで歌と向き合う事が出来ました。
真理先生のおっしゃる通りに歌う事が出来た時は、喉に力が入ることが無く、楽に美しい音が出るのです。
次第にうまく歌えるようになると、とても充実した幸せな気持ちになります。
また、自分のレッスン以外にも他の方のレッスンを聴講する事ができます。真理先生のおっしゃってる事が客観的によく分かり、自分が歌うのとは別の形で学ぶことができるのは、すごくいいなと思います。
次回のマスタークラスでは、また新しい事を吸収できる事を期待しながら、日々真理先生から学んだ事を練習し続けていきたいと思います!
加藤智子

  音大を卒業して、高校の音楽教師を32年間していましたが、大学では声楽をきちんと学んだことはありませんでした。ご縁があって、良い日本歌曲の先生に出会うことができ、現役の間は1年に数回というノロノロのペースでしたが、30年以上レッスンに通っています。
  日本歌曲もすてきですが、子供の頃から、ルパンやドビュッシーが好きで、フランス音楽やフランス語の響きに魅せられて、いつかはフランス語をきちんと学び、フランス歌曲を歌えるようになりたいと思っていました。
  そんな折に、小林真理先生を紹介していただきました。好きで歌ってはいましたが、フランス歌曲をきちんと学ぶのは真理先生が初めてで、3回ほどマスタークラスを受講させていただいています。
  毎回、真理先生がご熱心に、発声や発音を教えてくださるので、とても勉強になります。無駄な力を抜いて、柔らかな声でフランス語の歌を歌えるようになりたいと思っているのですが、いつも指摘されてしまうのは、日々の練習不足です…。孫の滞在とか、仕事とか日常の雑事を言い訳にして、なかなか音楽にじっくり向き合うことができません。でも、真理先生との出会いに感謝して、フランス歌曲を細々とでもわたしのライフワークとして続けていきたいと思っています。
  いつかフランスに滞在して、フランス語やフランス文化の中で、フランス歌曲を学ぶことができたら良いな〜、というのがわたしの目下の夢です。
山崎敦子

◯こちらは、昨年夏にコルシカ島で行われたマスタークラスの様子です。

《小林真理先生マスタークラス in カレンツァーナ》
まさかコルシカはモンテグロッソの麓、カレンツァーナ村の教会で歌うことができるなんて思ってもみなかった。17世紀末にローマ人建立の聖地の跡地に建て直されたというこのイタリアンバロック式のSaint Blaise教会で。。正直内装は少々痛んでおり、壁にかかる絵画も埃をかぶった感は否めないのだが、毎年8月カレンツァーナ音楽祭で世界を舞台に活躍する音楽家たちがこの場所で、まさにこの教会で天にも昇るような素晴らしい音楽を奏でることに間違いはない。
私がここで歌えたのは、もちろん小林真理先生のおかげである。
先生による現地でのマスタークラスの最後にこの夢のような機会を得たのだが、そのマスタークラスについて記してみたい。
小林先生によるフランス国内でのマスタークラスに参加するのは今回で4回目。毎回5日~7日間現地に滞在し、午前中は発声の基本、午後は課題曲のレッスンが続く。毎日合計1時間程のレッスンなのだが、これがなかなかの重圧感だ。こう言うと語弊があるかも知れないが、もちろんそれは先生からの圧ではなく(!)、自分自身と向き合わざるを得ないという試練から来る。「舌に力を入れない」「喉は開いて下げる」「頬上部を上げる」「口は開きすぎず、しかし音の高さにより開いていく」「息を回しながら歌う」・・・一音出すのに一度にやらなければならないことが多すぎる。それらに加えて歌詞をレガートに回していく難しさ。イタリア語、フランス語、ドイツ語、、各国語により発音のポイントは異なる。もちろん表現のことも言い出したら切りがないのは明白だ。
意識すべきことをすべて意識するが意識しすぎてはいけない。力を入れすぎてはいけないが力を入れないと声は出ない。このようなことだけを考えだすと、案の定声は出ない。考えすぎてはいけない。しかし程良い意識は必要だ。考える、考えない、考える、、、研修中は自分の中でこのやりとりだけが毎日繰り返される。
普段は会社でひたすらメールを裁くことに時間を費やしているせいか、このように自分と向き合うだけの時間はとてもしんどい。たまに逃げ出したくなる。しかしちょっと考えてみたまえ、この時間は何という贅沢な時間なのだろう!
ふとレッスン室から一歩外に踏み出せば、下方に広がる海の紺碧色に心震え、乾いた空気に響く教会の鐘の音に時を感じ、近くの手作りクッキー工場の甘い香りに子供の頃を思い出したり、、、ここカレンツァーナでは眠っている五感がこれでもかというぐらい覚醒される。そうだ、自然に身を任せればいいのだ。そう、ある時から私はこの自由な感覚に身をゆだねることができるようになっていた。
小林先生のレッスンを受け始めた初めのころは緊張から体がこわばり、震えだし思うように声を出すことができなかった。習うことと逆のことをいつもしてしまっていた。もちろん今でもそれを克服できたとは言えない。
しかし、自然の中でレッスンを受ける機会を重ねるごとに、体が自由に開き始めてきた感がある。それは大自然の中に何のわだかまりもなく体をゆだねる喜びを自覚したからではないだろうか。そのような状態で初めて学びを受けいれ、体の中に入れることができるのかもしれない。理屈では語れない、とてつもなく偉大なる自然の力がそこに存在している。体を開き、学びを受けいれる。それは音楽だけではなく、人生にも必要なことだ。私は音楽を通して、その尊い力を学んでいる。そして、一生学び続ける。
最後にこの場をお借りし、辛抱強く深い教えを惜しみなく与え続けて下さる小林真理先生に、そしていつも温かく、力強い励ましをくださる高橋淑子さんに、心から感謝の気持ちをお送りします。
チェチリア真知子

《Les Rencontres de Calenzana 〜 
小林真理先生のマスタークラスに参加して》

 2019年8月17日から8月22日の6日間、私はフランス・コルシカ島北部のカレンツァーナという、小さなしかし美しい町に赴きました。目的は、第19回目を迎えた《Les Rencontres de Calenzana》音楽フェスティバルに参加し、小林真理先生のマスタークラスを受講するためです。
 今年のマスタークラス受講生は7名。皆が17日初日にカレンツァーナで現地集合でした。レッスン会場(町役場の一室!)に到着するや否や、真理先生との再会の挨拶もそこそこにレッスン開始です。慌ててスーツケースを傍らに置き、レッスンモードにスイッチを切り替えました(笑)。
 レッスンは毎日、午前と午後に1回ずつあります。午前は発声とボーカルテクニックを中心としたフィジカルについて、そして午後は各々が持参した歌曲やオラトリオ、オペラアリアといった作品の解釈や、言語の発音を中心に据えて音楽作りのレッスンです。全てのレッスンを聴講しますので、受講生は自分の目前の課題以外も学び取ることができます。加えてお互いの日々の進歩、作品がピカピカに仕上がっていく喜びも共有していくことができるのは、合宿型マスタークラスの良いところではないでしょうか。
 カレンツァーナでのマスタークラスの魅力は、レッスンだけではありません。食事の素晴らしさは、他に比類なきと言えます!私たち受講生はホテルに宿泊せず、町の民家にお世話になりました。お留守中の住宅を貸していただき、自分の家のように自由に使わせていただくのです。朝食代わりのお菓子とお茶が用意されていました。昼食と夕食はフェスティバル参加者のために毎日素敵なパティオで用意されるのです。昼食はビュッフェ形式、夕食はコースで前菜・サラダ、メインディッシュ、デザートがふんだんに振る舞われました。そうそう、美味しいワインも欠かさず。滞在中、同じメニューが出てきたことはなく、全てコルシカ島地産地消、食材も豊富。毎日の楽しみの一つだったことは言うまでもありません。
  カレンツァーナは山登りの拠点の町でもあり、海辺の空港カルヴィの街から車で20分ほど上った所に位置していますので、海を眺望しながら、岩山の風景をバックにビールを一杯、などという夕暮れの過ごし方もできるのです。夜空の星の美しさも、一体何等星までの輝きが見えているのだろうと、目を疑うほどでした。
  最終日はコンサートで締めくくりました。会場は町の中心にある、サン=ブレーズ教会でした。真理先生も司会進行をしながら、私たち受講生とともに歌を披露してくださいました。コンサートは、今年がオッフェンバックの記念年であることから、「フランスのオペラ、オペレッタ」をテーマに、マスタークラスの成果を披露しました。ちなみに、私は今回メサジェの作品を初めて歌わせていただきました。他には、グノー、ビゼー、ドリーブ等。真理先生の曲紹介は、聴衆の聴きたい気持ちを盛り上げ、聴衆の皆さんは、歌う私たちの気持ちを支える雰囲気を作ってくださいました。もう一つ書き加えなければならないこととして、なんと、パリ高等音楽院ピアノ教授ドゥニ・パスカル氏がピアノを担当してくださったことがあります。私たち受講生は素晴らしい教会で、素晴らしいピアノに支えられ、本当に幸せな時を過ごし、マスタークラスを終えることができました。
 コルシカ島は素敵なところよ、と真理先生からずっとずっと聞いており、やっと念願叶った2019年の私の夏。真理先生とともに過ごした音楽の日々、海、山、太陽、食べ物、ワイン、そして人々。しっかり充電して、リスタートです。
柚木たまみ




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