室内楽団 CAMERATA STRAVAGANZA 第1回公演「鏡演 DUO」。2015年12月21日に目黒パーシモンホール 小ホール (東京) にて行われる本公演を日仏現代音楽協会の後援事業としてお送りします。今回は楽団の結成に奔走されたフルート奏者の内山貴博さんがインタビューに答えて下さいました。本記事下部に掲載していますので合わせてご覧ください。
日時 : 2015年12月21日 (月) 18時45分開演(18:15分開場)
場所 : めぐろパーシモンホール・小ホール
住所 : 〒152-0023 東京都目黒区八雲1-1-1
電話 : 03-5701-2924
チケット : 前売 2,000円 / 当日 2,500円
場所 : めぐろパーシモンホール・小ホール
住所 : 〒152-0023 東京都目黒区八雲1-1-1
電話 : 03-5701-2924
チケット : 前売 2,000円 / 当日 2,500円
CAMERATA STRAVAGANZA 第1回公演「鏡演 DUO」
出演 :
秋生智之 : パーカッション
石原悠企 : ヴァイオリン
井上ハルカ (会員) : サクソフォン
内山貴博 (会員) : フルート
江崎萌子 : ピアノ
大井駿 : ピアノ
倉冨亮太 : ヴァイオリン
土橋庸人 : ギター
鶴田麻記 : トランペット
中舘壮志 : クラリネット
石原悠企 : ヴァイオリン
井上ハルカ (会員) : サクソフォン
内山貴博 (会員) : フルート
江崎萌子 : ピアノ
大井駿 : ピアノ
倉冨亮太 : ヴァイオリン
土橋庸人 : ギター
鶴田麻記 : トランペット
中舘壮志 : クラリネット
曲目 :
アンドレ・ジョリヴェ : フルートとクラリネットのための「ソナチネ」より
佐原洸 (会員) : トランペットとヴァイオリンのための「欄間」
松宮圭太 (会員) : バリトンサクソフォンとギターのための「デヴィアシオン」より
福士則夫 (協会名誉顧問) : ピアノとヴィブラフォンのための「シリカ」
ルイス・ナオン : クラリネットとソプラノサクソフォンのための「デュエル1」
アーノルド・シェーンベルク : ヴァイオリンとピアノのための「幻想曲」 op.47
エイノユハニ・ラウタヴァーラ : フルートとギターのための「ソナタ」
アンドレ・ジョリヴェ : トランペットとパーカッションのための「エプタード」
ダリウス・ミヨー : 2つのヴァイオリンのための「二重奏曲」 op.258
主催 : CAMERATA STRAVAGANZA
後援 : 日仏現代音楽協会
後援 : 日仏現代音楽協会
インタビュー:
- 今回はCAMERATA STRAVAGANZAを結成されたフルート奏者の内山貴博さんにお話を伺います。どうぞよろしくお願いします。
この度は宜しくお願いします。
- CAMERATA STRAVAGANZAは公式ウェブサイトにおいて「内山 貴博(fl)、大井駿(pf)を中心に結成され」「古い音楽から未来の音楽までを考える新しい室内楽団」とあります。どのようにメンバーを募られ、また、どういう「新しさ」を考えておられるかお話しいただけますか?
ピアニストの大井駿くんとは、かつてパリで共に勉強していて音楽の話をしたりコンサートに一緒に行った仲でした。現在、彼はザルツブルグのモーツァルテウム音楽大学でピアノと指揮を勉強する優秀な音楽家で、彼の音楽への感性や知識にはいつも刺激を受けていました。そんな彼と、演奏会で聴く機会の少ないクラシックのレパートリーや現代音楽を演奏するアンサンブルをいつか組みたいねと話していました。
フランス、パリは世界の中でも現代音楽を聴く機会が豊富で、刺激を受けることの多い街の一つです。そしてパリ国立高等音楽院で僕が師事する先生が、フランスが誇るアンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーであるソフィー・シェリエということもあって、僕自身現代曲に触れる機会が多く、色々な曲を知りたいと考えたのも楽団結成のきっかけとなりました。
室内楽団 « CAMERATA STRAVAGANZA »は、バロック音楽から現代音楽までの様々なレパートリーを視野に入れ、毎回一つのテーマを掲げて、年に一度演奏会を行うことを目標に組織しています。メンバーは僕が出会った人を中心に「この人をこの企画に巻き込んだら面白いだろう」と思った人達に声をかけています。最近結果を出している実力者ばかりで、年に一度という演奏会でも最高の演奏を届けられるメンバーになっていると思います。小中編成の室内楽のバリエーションにはまだまだ楽器数が足りないので、これからも演奏家を増やしていければと思っています。
-立ち上げ公演となる今回の演奏会のタイトルとなった「鏡演」とはどのような意味ですか?またどういったコンセプトで今回の演奏会を練られましたか?そして、演奏される作品と作曲家はどのように選ばれたかお話しいただけますか?
「共演」の「きょう」の字を「鏡」に変えた理由は、ステージの上で対になっている二人の奏者が、鏡に写りこむように立っているという舞台を思い描いたからです。それはつまり二人どちらが欠けても成り立たない、二人揃って一つの楽曲が成り立つという力をこの「二重奏」という組み合わせに感じてるからです。二人が存在してなければならない、というステージを堪能して頂ければという想いを込めました。それともう一つ、鏡という文字はラヴェル作曲の組曲『鏡』にも由来しています。彼はこのタイトルを選ぶに当たってシェイクスピアの『ジュリアス=シーザー』の次の一文から影響を受けたと言われています。
「君は反射によってでしか自分を見ることが出来ないのだから私が鏡になって君の姿を映しだそう、君の知らない君自身の姿を。」
そしてラヴェルはこの組曲に対して「この組曲は自分自身を映し出す鏡なのだ」とも言っています。それは楽曲に己をさらけ出すという想いです。我々もこの公演にて己をさらけ出し、我々を知ってもらえる公演にできればと願って「鏡」という字を用い、「鏡演」と名づけました。
今回の公演では、まずシンプルに何か面白いことができないかとアイディアを練り始めました。旗揚げ公演というのは室内楽団にとって自己紹介みたいなものですから、自分達がこれからどういうレパートリーに挑戦していくかがお客様にはっきりと伝わった方が良いと思い、インパクトが必要だと感じました。そこでまず、アンサンブルの最小単位である二重奏に目をつけました。そして、変わった組み合わせの二重奏や、よく見かける組み合わせだけれどもなかなか演奏されないようなレパートリーを採用していきました。
また、クラシック音楽から現代音楽への架け橋に力を入れている作曲家達に焦点を当てました。いま僕が勉強しているパリ国立高等音楽院はそういう架け橋の先端と言っても良いほど、エクリチュールから電子音楽までの教育を推し進めていることに気がつきました。『デュエル1』を作曲したルイス・ナオン氏はパリ国立高等音楽院作曲科の教授で、現代の電子音楽と器楽の関係の発展に貢献しているひとりです。その彼に学んできた松宮圭太さんと佐原洸さんに今回の曲の提供をしてもらいました。そして、日本が誇る作曲家の福士則夫さんもまた、パリ国立高等音楽院で学びオリヴィエ・メシアンに師事しています。今回のプログラムは、パリ国立高等音楽院という場を架け橋とした、四人の現代音楽作曲家の「共演-鏡演」の場にもなっているわけです。
そして、現代音楽の発展に重要な役割を果たしたアンドレ・ジョリヴェとアーノルド・シェーンベルクの曲を取り上げました。ジョリヴェはエドガー・ヴァレーズの元で音響学的実験を通じて打楽器の研究をした作曲家であり、『エプタード』では彼の独特な世界に浸ることができると思います。シェーンベルクは言うまでもなく12音技法で名を知られた作曲家で、彼の研究はその後フランスを始め世界で発展した書法であるセリー・ミュージックの発展にも繋がっています。彼らの音楽へのアプローチは、今なお作曲家や演奏家の発想に影響を与えています。そして、フィンランドから現代音楽に独自の視点でアプローチするエイノユハニ・ラウタヴァーラ氏と、ダリウス・ミヨーのあまり演奏される機会の少ない楽曲を選曲しました。こうして築いたプログラムを、我々の世代の演奏家がどう表現するか、演奏会に来て楽しんで頂ければ嬉しく思います。
- 内山さんは現在パリ国立高等音楽院第一課程第三学年に在籍されており、昨年2014年には、第3回ニコレ国際フルートコンクールにて第3位(第1位なし)を受賞されています。内山さんご自身がフランスに渡られた経緯、コンクールで感じられたこと、最近の演奏活動などについてお話し頂けますか?
昨年ニコレ国際コンクールに出場して、だいぶ音楽へのアプローチが変わった気がしています。観客にどう聞かせるかということを以前より深く考えるようになりました。演奏家と楽譜の関係というのは俳優が台本を読む行為と似ていると思います。俳優は、人前に出る前にセリフの端々まで読み込み、登場人物との関係性を見抜いて作品と一体となっていくのだと思いますが、演奏家の世界も、同じことを楽器を使って行っているのだと考えるようになりました。フランスでは楽曲分析の習慣がとても深く根付いているため、分析したことがどう演奏に反映されるかというところまで考えていないと説得力が出てきません。
今述べたことはフランスに来る以前には真摯に捉えることができていませんでした。高校生の時、ニース国際夏季音楽講習会に参加にして異国の文化に初めて触れ、何もかもに新鮮さを感じ、フランスという国で勉強したいと強く願いました。そして高校卒業後に渡仏し、まず2年間ほどパリ地方音楽院で学んでから、2013年より現在に至るまでパリ国立高等音楽院に在籍しています。渡仏して4年が経過しましたが、こちらで学んだことは既に自分自身のこれからの音楽人生において重宝するものばかりですし、それらを発信できるように今後様々な形での演奏や企画に携わっていければと考えます。
最近ではソロでのコンサートはもちろん、フルートでの三重奏や四重奏とフルートの可能性を追求したコンサートも行っています。まだまだ駆け出しではありますがこれから様々なことに挑戦していきたいと思います。
- CAMERATA STRAVAGANZAの今後の方針としてどういった内容、コンセプト、編成の演奏会を考えておられますか?
我々の目的は、一般的には敷居が高いと思われがちなクラシックのレパートリーや普段なかなか触れることのない現代音楽作品を馴染みやすく理解してもらえるよう、音楽を日常的なテーマと結びつけたコンサートを提示することです。演奏家が真剣に音楽作品を演奏するのと同じく、お客様にも真剣に聴きに来て欲しいという想いで、コンセプトとプログラムを練っています。そのアプローチのひとつとして、演奏家の意気込みや演奏曲目の解説、また、楽曲を提供して下さる作曲家の方の楽曲解説や作品紹介をまとめた動画を我々のウェブサイト上で配信しようと画策中です。お客様とより近づけるような室内楽団を目指しています。
今回は二重奏を扱いましたが、今後は大きなものから小さなものまで、様々な編成のプログラムを考えています。皆さんが興味をそそられるような時間をお届けしたいと思います。
- 今後の CAMERATA STRAVAGANZA の展開とご自身のご活躍を楽しみにしています。内山貴博さん、ありがとうございました!
1992年、東京生まれ。10歳よりフルートを始める。
東京藝術大学附属音楽高等学校を経て、同大学に入学。その後渡仏し、2011年からフランス・パリ地方音楽院に在籍。同音楽院を最優秀なディプロマと共に卒業後、2013年よりフランス・パリ国立高等音楽院に入学し、現在同高等音楽院第一課程第三学年に在籍。
第61回全日本学生音楽コンクール中学生部門優勝、第64回同音楽コンクール優勝、横浜市民賞(聴衆賞)、日本放送協会賞。第16回松方ホール音楽賞、第18回若きフルーティストのためのコンクール第2位、第18回びわ湖国際フルートコンクール第3位、第32回日本管打楽器コンクール第2位。第3回オーレル・ニコレ国際フルートコンクール第3位(第1位なし)。
フランス・パリ、日本・東京や関西を中心に活動中。自作創作フルートトリオ« Flute trio SOU »、« Ensemble Demi »メンバー。現代音楽の分野にも積極的に取り組み、”Ensemble demi”の公演にて坂東祐大氏の « Etudie pour quatuor de la flûte »、 榎政則氏の « 波文様 »、渡辺りか子氏の « 森の詩 »を初演した。 同世代の演奏家たちと« Camerata Stravaganza »を結成、その中心メンバーの一員として活動。
ワルター・アウアー、瀬尾和紀、工藤重典、クロード・ルフェーブル、ジュリアン・ボーディモン、カール=ハインツ・シュッツ各氏のマスタークラスを受講。これまでに田村珠美、岩佐和弘、堀井恵、木ノ脇道元、高木綾子、ミッシェル・モラゲス各氏に師事。現在ソフィー・シェリエ、ヴァンソン・リュカ各氏に、ピッコロをピエール・デュマイ氏、室内楽をミッシェル・モラゲス、ミカエル・エンツ、ジャン・マックマナマ、棚田文紀各氏に師事。