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2015年11月19日木曜日

アンサンブル室町公演 『エドガー・ヴァレーズと室伏鴻に捧ぐ墓』




日時:2015年12月22日(火)19:00開演(18:30開場)23日(祝・水)13:30開演(13:00開場)
チケット:一般 4,000円/ 学生 2,500円(全席自由)

助成:芸術文化振興基金、朝日新聞文化財団
後援:在日フランス大使館、日仏現代音楽協会

本公演は、2015年が没後50年にあたり音楽史の中で最も先見の明のあった作曲家エドガー・ヴァレーズ (1883-1965)と、去る6月に急逝された舞踏の巨匠、室伏鴻氏の2人の偉大なアーティストにオマージュを捧げます。
このふたりの巨匠を繋ぐ要素は、数限りなくあります――途方もない創造力、先見の明、 真理の厳しい探究、世界的な規模、シンプルな人間性、アウトサイダーという自覚もしくは主張、疲れを知らぬ精力的な職人芸、等々。
これらの素晴らしい要素をもとに「エドガーために」上野雅亮、神本真理、久木山直、中島夏樹(テクノパフォーマンス)、三宅悠太の 5 名の現代作曲家に作品を委嘱しました。そして今年の夏、パリでの新作「真夜中のニジンスキー」で、室伏鴻さんとコラボレーションする予定であったサルジョ・サンカレー、オリバー・ティダティダ、ケヴィン・フランの3 名のダンサーに踊っていただきます。また公演中、室伏さんの映像も一部上映します。

プログラム:全曲アンサンブル室町委嘱作品、世界初演
上野雅亮
神本真理(会員)
久木山直
中島夏樹
三宅悠太

ダンス:
サルジョ・サンカレー、オリバー・ティダティダ、ケヴィン・フラン

指揮:小森康弘 
芸術監督:ローラン・テシュネ (会員)
照明:松本永(eimatsumoto Co.Ltd.) 
舞台監督:浜田和孝
制作:PolyArts

演奏:アンサンブル室町
澄川武史(能管)、あかる潤(篠笛)、黒田鈴尊/渡辺元子(尺八)、三浦元則(篳篥)、金澤裕比子(笙)、久保田晶子(琵琶)、中島裕康/平田紀子/日原暢子(箏)、村澤丈児(胡弓)、 守啓伊子(三味線)、小川実加子(打楽器) 
菅沼起一/森吉京子(リコーダー)、菊池かなえ/仲間知子(トラヴェルソ)、小野智子(オーボエ)、橋本晋哉(セルパン・会員)、内田光音/田宮亮(オルガン)、村尾芽衣(チェンバロ)、 飯塚直/入川奨/石若駿(ルネッサンスパーカッション)、上田朝子/須賀麻里江/高岸卓人(バロックヴァイオリン)、エマニュエル・ジラール/中家春奈(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、 山澤慧(バロックチェロ)、山田岳(バロックギター・リュート)


お問い合わせ・チケット予約:
東京コンサーツ Tel: 03-3226-9755/Fax03-3226-9882(月〜金 10:00-18:00)
http://www.tokyo-concerts.co.jp/ (HPで予約、セブンイレブンで受け取り可)


アンサンブル室町:
一般社団法人アンサンブル室町はヨーロッパと日本の古楽器の混合編成を基本に、演劇・舞踊・能・声明などあらゆる形の芸術とのコラボレーションによるこれまでにない音楽表現を追求して 2007年にフランス人チェンバロ奏者・作曲家のローラン・テシュネを代表として結成。2007年に北とぴあ国際音楽祭で初公演『豊臣秀吉の夢』、2008年にサントリーホール・ブルーローズで『邯鄲の夢』、2009年に東京芸術大学で『第一回ワークショップ』、2010年に日本大学カザルスホールで『ポール・クローデルの百扇帖』、2011年に東京文化会館小ホールで『ポール・クローデルの百扇帖 II』とサントリーホール・ ブルーローズでやってみなはれプロジェクトの一環として『元素』を開催。2012年には一般社団法人アンサンブル室町を設立し、江戸東京博物館伝統芸能フォーラムで東京スカイツリー完成記念特別展関連公演『塔にみる夢、未来に捧げる祈り』、近江楽堂で『第一回レクチャーコンサート~尺八+リュート+バロックチェロ~』、紀尾井小ホールで『源氏物語』、2013 年には北沢タウンホールで『帝国の建設者』、津田ホールで『東方綺譚』公演を開催、同公演でサントリー芸術財団の第13回佐治敬三賞を受賞。2014年には第10回公演として『オルフェオとエウリディーチェ』公演を杉並公会堂小ホールで開催。


CAMERATA STRAVAGANZA 第1回公演「鏡演 DUO」

室内楽団 CAMERATA STRAVAGANZA 第1回公演「鏡演 DUO」。2015年12月21日に目黒パーシモンホール 小ホール (東京) にて行われる本公演を日仏現代音楽協会の後援事業としてお送りします。今回は楽団の結成に奔走されたフルート奏者の内山貴博さんがインタビューに答えて下さいました。本記事下部に掲載していますので合わせてご覧ください。

日時 : 2015年12月21日 (月) 18時45分開演(18:15分開場)
場所 : めぐろパーシモンホール・小ホール
住所 : 〒152-0023 東京都目黒区八雲1-1-1
電話 : 03-5701-2924
チケット : 前売 2,000円 / 当日 2,500円


CAMERATA STRAVAGANZA 第1回公演「鏡演 DUO」


出演 :
秋生智之 : パーカッション
石原悠企 : ヴァイオリン
井上ハルカ (会員) : サクソフォン
内山貴博 (会員) : フルート
江崎萌子 : ピアノ
大井駿 : ピアノ
倉冨亮太 : ヴァイオリン
土橋庸人 : ギター
鶴田麻記 : トランペット
中舘壮志 : クラリネット

曲目 :
アンドレ・ジョリヴェ : フルートとクラリネットのための「ソナチネ」より
佐原洸 (会員) : トランペットとヴァイオリンのための「欄間」
松宮圭太 (会員) : バリトンサクソフォンとギターのための「デヴィアシオン」より
福士則夫 (協会名誉顧問) : ピアノとヴィブラフォンのための「シリカ」
ルイス・ナオン : クラリネットとソプラノサクソフォンのための「デュエル1」
アーノルド・シェーンベルク : ヴァイオリンとピアノのための「幻想曲」 op.47
エイノユハニ・ラウタヴァーラ : フルートとギターのための「ソナタ」
アンドレ・ジョリヴェ : トランペットとパーカッションのための「エプタード」
ダリウス・ミヨー : 2つのヴァイオリンのための「二重奏曲」 op.258


主催 : CAMERATA STRAVAGANZA
後援 : 日仏現代音楽協会
  




インタビュー:
- 今回はCAMERATA STRAVAGANZAを結成されたフルート奏者の内山貴博さんにお話を伺います。どうぞよろしくお願いします。
この度は宜しくお願いします。

- CAMERATA STRAVAGANZAは公式ウェブサイトにおいて「内山 貴博(fl)、大井駿(pf)を中心に結成され」「古い音楽から未来の音楽までを考える新しい室内楽団」とあります。どのようにメンバーを募られ、また、どういう「新しさ」を考えておられるかお話しいただけますか?
ピアニストの大井駿くんとは、かつてパリで共に勉強していて音楽の話をしたりコンサートに一緒に行った仲でした。現在、彼はザルツブルグのモーツァルテウム音楽大学でピアノと指揮を勉強する優秀な音楽家で、彼の音楽への感性や知識にはいつも刺激を受けていました。そんな彼と、演奏会で聴く機会の少ないクラシックのレパートリーや現代音楽を演奏するアンサンブルをいつか組みたいねと話していました。
フランス、パリは世界の中でも現代音楽を聴く機会が豊富で、刺激を受けることの多い街の一つです。そしてパリ国立高等音楽院で僕が師事する先生が、フランスが誇るアンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーであるソフィー・シェリエということもあって、僕自身現代曲に触れる機会が多く、色々な曲を知りたいと考えたのも楽団結成のきっかけとなりました。
室内楽団 « CAMERATA STRAVAGANZA »は、バロック音楽から現代音楽までの様々なレパートリーを視野に入れ、毎回一つのテーマを掲げて、年に一度演奏会を行うことを目標に組織しています。メンバーは僕が出会った人を中心に「この人をこの企画に巻き込んだら面白いだろう」と思った人達に声をかけています。最近結果を出している実力者ばかりで、年に一度という演奏会でも最高の演奏を届けられるメンバーになっていると思います。小中編成の室内楽のバリエーションにはまだまだ楽器数が足りないので、これからも演奏家を増やしていければと思っています。

-立ち上げ公演となる今回の演奏会のタイトルとなった「鏡演」とはどのような意味ですか?またどういったコンセプトで今回の演奏会を練られましたか?そして、演奏される作品と作曲家はどのように選ばれたかお話しいただけますか?
「共演」の「きょう」の字を「鏡」に変えた理由は、ステージの上で対になっている二人の奏者が、鏡に写りこむように立っているという舞台を思い描いたからです。それはつまり二人どちらが欠けても成り立たない、二人揃って一つの楽曲が成り立つという力をこの「二重奏」という組み合わせに感じてるからです。二人が存在してなければならない、というステージを堪能して頂ければという想いを込めました。それともう一つ、鏡という文字はラヴェル作曲の組曲『鏡』にも由来しています。彼はこのタイトルを選ぶに当たってシェイクスピアの『ジュリアス=シーザー』の次の一文から影響を受けたと言われています。

  「君は反射によってでしか自分を見ることが出来ないのだから私が鏡になって君の姿を映しだそう、君の知らない君自身の姿を。」

そしてラヴェルはこの組曲に対して「この組曲は自分自身を映し出す鏡なのだ」とも言っています。それは楽曲に己をさらけ出すという想いです。我々もこの公演にて己をさらけ出し、我々を知ってもらえる公演にできればと願って「鏡」という字を用い、「鏡演」と名づけました。
今回の公演では、まずシンプルに何か面白いことができないかとアイディアを練り始めました。旗揚げ公演というのは室内楽団にとって自己紹介みたいなものですから、自分達がこれからどういうレパートリーに挑戦していくかがお客様にはっきりと伝わった方が良いと思い、インパクトが必要だと感じました。そこでまず、アンサンブルの最小単位である二重奏に目をつけました。そして、変わった組み合わせの二重奏や、よく見かける組み合わせだけれどもなかなか演奏されないようなレパートリーを採用していきました。
また、クラシック音楽から現代音楽への架け橋に力を入れている作曲家達に焦点を当てました。いま僕が勉強しているパリ国立高等音楽院はそういう架け橋の先端と言っても良いほど、エクリチュールから電子音楽までの教育を推し進めていることに気がつきました。『デュエル1』を作曲したルイス・ナオン氏はパリ国立高等音楽院作曲科の教授で、現代の電子音楽と器楽の関係の発展に貢献しているひとりです。その彼に学んできた松宮圭太さんと佐原洸さんに今回の曲の提供をしてもらいました。そして、日本が誇る作曲家の福士則夫さんもまた、パリ国立高等音楽院で学びオリヴィエ・メシアンに師事しています。今回のプログラムは、パリ国立高等音楽院という場を架け橋とした、四人の現代音楽作曲家の「共演-鏡演」の場にもなっているわけです。
そして、現代音楽の発展に重要な役割を果たしたアンドレ・ジョリヴェとアーノルド・シェーンベルクの曲を取り上げました。ジョリヴェはエドガー・ヴァレーズの元で音響学的実験を通じて打楽器の研究をした作曲家であり、『エプタード』では彼の独特な世界に浸ることができると思います。シェーンベルクは言うまでもなく12音技法で名を知られた作曲家で、彼の研究はその後フランスを始め世界で発展した書法であるセリー・ミュージックの発展にも繋がっています。彼らの音楽へのアプローチは、今なお作曲家や演奏家の発想に影響を与えています。そして、フィンランドから現代音楽に独自の視点でアプローチするエイノユハニ・ラウタヴァーラ氏と、ダリウス・ミヨーのあまり演奏される機会の少ない楽曲を選曲しました。こうして築いたプログラムを、我々の世代の演奏家がどう表現するか、演奏会に来て楽しんで頂ければ嬉しく思います。

- 内山さんは現在パリ国立高等音楽院第一課程第三学年に在籍されており、昨年2014年には、第3回ニコレ国際フルートコンクールにて第3位(第1位なし)を受賞されています。内山さんご自身がフランスに渡られた経緯、コンクールで感じられたこと、最近の演奏活動などについてお話し頂けますか?
昨年ニコレ国際コンクールに出場して、だいぶ音楽へのアプローチが変わった気がしています。観客にどう聞かせるかということを以前より深く考えるようになりました。演奏家と楽譜の関係というのは俳優が台本を読む行為と似ていると思います。俳優は、人前に出る前にセリフの端々まで読み込み、登場人物との関係性を見抜いて作品と一体となっていくのだと思いますが、演奏家の世界も、同じことを楽器を使って行っているのだと考えるようになりました。フランスでは楽曲分析の習慣がとても深く根付いているため、分析したことがどう演奏に反映されるかというところまで考えていないと説得力が出てきません。
今述べたことはフランスに来る以前には真摯に捉えることができていませんでした。高校生の時、ニース国際夏季音楽講習会に参加にして異国の文化に初めて触れ、何もかもに新鮮さを感じ、フランスという国で勉強したいと強く願いました。そして高校卒業後に渡仏し、まず2年間ほどパリ地方音楽院で学んでから、2013年より現在に至るまでパリ国立高等音楽院に在籍しています。渡仏して4年が経過しましたが、こちらで学んだことは既に自分自身のこれからの音楽人生において重宝するものばかりですし、それらを発信できるように今後様々な形での演奏や企画に携わっていければと考えます。
最近ではソロでのコンサートはもちろん、フルートでの三重奏や四重奏とフルートの可能性を追求したコンサートも行っています。まだまだ駆け出しではありますがこれから様々なことに挑戦していきたいと思います。

- CAMERATA STRAVAGANZAの今後の方針としてどういった内容、コンセプト、編成の演奏会を考えておられますか?
我々の目的は、一般的には敷居が高いと思われがちなクラシックのレパートリーや普段なかなか触れることのない現代音楽作品を馴染みやすく理解してもらえるよう、音楽を日常的なテーマと結びつけたコンサートを提示することです。演奏家が真剣に音楽作品を演奏するのと同じく、お客様にも真剣に聴きに来て欲しいという想いで、コンセプトとプログラムを練っています。そのアプローチのひとつとして、演奏家の意気込みや演奏曲目の解説、また、楽曲を提供して下さる作曲家の方の楽曲解説や作品紹介をまとめた動画を我々のウェブサイト上で配信しようと画策中です。お客様とより近づけるような室内楽団を目指しています。
今回は二重奏を扱いましたが、今後は大きなものから小さなものまで、様々な編成のプログラムを考えています。皆さんが興味をそそられるような時間をお届けしたいと思います。

- 今後の CAMERATA STRAVAGANZA の展開とご自身のご活躍を楽しみにしています。内山貴博さん、ありがとうございました!




内山貴博 フルート
1992年、東京生まれ。10歳よりフルートを始める。
東京藝術大学附属音楽高等学校を経て、同大学に入学。その後渡仏し、2011年からフランス・パリ地方音楽院に在籍。同音楽院を最優秀なディプロマと共に卒業後、2013年よりフランス・パリ国立高等音楽院に入学し、現在同高等音楽院第一課程第三学年に在籍。
第61回全日本学生音楽コンクール中学生部門優勝、第64回同音楽コンクール優勝、横浜市民賞(聴衆賞)、日本放送協会賞。第16回松方ホール音楽賞、第18回若きフルーティストのためのコンクール第2位、第18回びわ湖国際フルートコンクール第3位、第32回日本管打楽器コンクール第2位。第3回オーレル・ニコレ国際フルートコンクール第3位(第1位なし)。
フランス・パリ、日本・東京や関西を中心に活動中。自作創作フルートトリオ« Flute trio SOU »、« Ensemble Demi »メンバー。現代音楽の分野にも積極的に取り組み、”Ensemble demi”の公演にて坂東祐大氏の « Etudie pour quatuor de la flûte »、 榎政則氏の  « 波文様 »、渡辺りか子氏の  «  森の詩 »を初演した。 同世代の演奏家たちと« Camerata Stravaganza »を結成、その中心メンバーの一員として活動。

ワルター・アウアー、瀬尾和紀、工藤重典、クロード・ルフェーブル、ジュリアン・ボーディモン、カール=ハインツ・シュッツ各氏のマスタークラスを受講。これまでに田村珠美、岩佐和弘、堀井恵、木ノ脇道元、高木綾子、ミッシェル・モラゲス各氏に師事。現在ソフィー・シェリエ、ヴァンソン・リュカ各氏に、ピッコロをピエール・デュマイ氏、室内楽をミッシェル・モラゲス、ミカエル・エンツ、ジャン・マックマナマ、棚田文紀各氏に師事。

2015年11月6日金曜日

演奏会シリーズ『日本の現代音楽をめぐって』のお知らせ

日仏現代音楽協会がお送りする、演奏会シリーズ『日本の現代音楽をめぐって』。本演奏会はパリ日本文化会館と日仏現代音楽協会の共催事業で、フランスでいまだ十分に紹介されていない、日本のすぐれた作曲家やその作品を取り上げることを目的としています。
第二弾となる今回は【優しき歌】と題して、20世紀日本歌曲の名曲に、幅広いジャンルで活躍する若手作曲家の新作を加えてお届けします。





日本の現代音楽をめぐって #2 【優しき歌】

日時:2015年12月2日(水)18時30分開演
会場:パリ日本文化会館 小ホール
住所 : 101Bis Quai Branly, 75015 Paris, France
(メトロ6番線 : M° Bir-Hakeim または RER C線 : Champ de Mars – Tour Eiffel駅)
地図 : http://www.mcjp.fr/fr/informations-pratiques/venir-a-la-mcjp
チケット : 5 euros

プログラム :
河田文忠( 1938-2012 ):優しき歌
林光( 1931- 2012 ):四つの夕暮れの歌
八村義夫( 1938-1985 ):彼岸花の幻想
網守将平(1990- ):メゾ・ソプラノとピアノのための “Practice of chimeric movement on static syntax” (世界初演)
柴田南雄( 1916-1996):立原道造の詩による「優しき歌」

出演:
小林真理(メゾ・ソプラノ・名誉会員)
棚田文紀 (ピアノ)

詳細情報:
http://www.mcjp.fr/ja/agenda/la-bonne-chanson
http://afjmc.org/ja/autour-de-la-musique-japonaise-daujourdhui-2/

予約・お問い合わせ:
パリ日本文化会館
電話 : +33 1 44 37 95 01

プロフィール :
網守将平 作曲家 
1990年東京都生まれ。クラシック-現代音楽、電子音楽-サウンドアートの領域を横断し活動。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。在学中に長谷川良夫賞受賞。同大学院音楽研究科修士課程修了。修了作品『Multilubricity』は東京藝術大学買上となり、同大学美術館(芸術資料館)に永久保存されている。2007年ピティナピアノコンペティション特級において新曲課題曲作品賞受賞。2012年東京国際室内楽作曲コンクール入選。2013年京都フランス音楽アカデミーにおいてメシアン賞受賞。同年日本音楽コンクール作曲部門1位及び明治安田賞受賞。2014年電子音楽レーベルPROGRESSIVE FOrMよりリリースのコンピレーションアルバム『Forma. 4.14』に参加。同年NHK Eテレにて放送された『スコラ 坂本龍一 音楽の学校』に出演。2015年ACSM116賞受賞。これまでに作曲を佐々木邦雄、夏田昌和、安良岡章夫、鈴木純明の各氏に師事。

小林真理 メゾ・ソプラノ
鎌倉市生まれ。3歳よりピアノを始め、10歳より中村浩子女史に師事し声楽を学ぶ。1979年東京芸術大学音楽学部声楽科を卒業、同大学院修士課程に進み、1981年文化放送音楽賞受賞、第1回日仏声楽コンクールに入選、フランス音楽をより深く学ぶために留学を決意し、1982年フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に入学、レジーヌ・クレスパン女史に師事、1987年同音学院のオペラ科を終了、1989年にはウィリアム・クリスティ氏の指導する同音学院の古典声楽科のクラスを1等賞を得て終了する。パリ国立高等音楽院に在籍中の1983年頃より数々の国際声楽コンクールにて受賞(1984年パリのフランス歌曲国際コンクールでフォーレ賞、1988年クレルモン・フェランのオラトリオ・リート国際コンクールではリタ・シユトライヒ・記念大賞)この頃よりバロックから現代音楽に至る幅広い演奏活動を始める。
1993年には、その後進学した東京芸術大学博士課程において博士論文『オリヴィエ・メシアンの歌曲研究ーハラウイを中心にー』を書き、博士号を収得する。
コンサート活動においては、ピエール・ブーレーズの指揮でシャトレ劇場でハリソン・バートウィッスルの〔メリヂアン〕のフランス初演、フランス国立管弦楽団、フィルハーモニック・オーケストラと共演、オランダのコンセルトゲボー・ホールにてシェーンべルクの〔4つのオーケストラ歌曲作品22〕、佐渡裕指揮でオーケストラ・ラムルーとマーラーの交響曲第2番、現代音楽作曲家の初演は数多く、アンサンブル・アンテルコンタンポランと数度共演、ロストロポーヴィッチの指揮で小林真理のために書かれたピヨートル・モスの〔スターバート・マーテル〕、最近ではフィリップ・ルルーの新作をロレーヌ国立管弦楽団とフランスとドイツで初演、ヨーロッパのみでなく、アメリカ、東欧、オーストラリアにてもソリストとして活躍している。オペラの分野では ジェフリー・テート指揮によるベルクの〔ルル〕の女流工芸家役、プッチーニの〔蝶々夫人〕のスズキ役、モーツァルトの〔コシ・ファン・トゥッテ〕のドラベラ役、ヴィヴァルディの世界初演〔真実の証〕のルステーナ役などを演じている。
CD録音も多数に及び、モーツァルトの〔レクイエム〕、〔マニュエル・ロ-ゼンタール歌曲集〕、〔20世紀の作曲家の編曲による世界の民謡〕などがあり、最近では、フランスを代表するサクソフォン奏者、クロード・ドラングルとの〔japanese love songs〕、メシアンの〔ハラウィ〕などがある。
1999年にフランス国家教授資格を得て現在ストラスブール地方音楽院で声楽の専任教授を勤め、ニースのアカデミー他、各国でマスタークラスを行い、後進の指導にも情熱をそそいでいる。
倉敷の大原美術館のギャラリーコンサートに計3度出演した他、2013年にはフランスの各地でオーケストラとワーグナーの「ヴェーゼンドンクの歌曲」を数回歌い、同年10月25日には東京シティフィルとプーランクのオペラ「カルメル派修道女の対話」〔演奏会形式〕の修道院長の役を歌って好評を博した。


棚田文紀 作曲家、ピアニスト
1961年(昭和36年)岡山市生。河田文忠に作曲の手ほどきを受ける。その後東京芸術大学音楽学部作曲科において、北村昭、南弘明、八村義夫の各氏に作曲を、アンリエット・ピュイグ・ロジェ女史に伴奏法を学ぶ。1984 年、フランス政府給費留学生として、パリ国立高等音楽院入学。作曲、管弦楽法、ピアノ伴奏科の全科でプルミエ・プリ(一等賞)を得て卒業。その間クロード・バリーフ、ポール・メファーノ、ジャン・ケルネール、ソランジュ・キャパランの各氏に師事。現在、作曲家、ピアニストとして活動している。現代音楽演奏グループであるアンサブル・イテイネレールのピアニストとして、数多くの現代作品の初演、録音にたずさわる。小林真理とはメシアンの歌曲集ハラウイ、ローゼンタール歌曲集を録音した。作曲家としては、エマニュエル・パユ、ピエール・イヴ・アルトー、クロード・ドラングル、ダヴィッド・グリマル、パブロ・マルケース、ハバネラ・サクソフォーン・クアルテット、イテイネレール、2E2M 等の演奏家、団体の為に作品を書いている。
作品は Editions Henry Lemoine、Gérard Billaudot などから出版されている。

2015年11月5日木曜日

会員の演奏会・講座情報(2015年11月〜)

アルスムジカ音楽祭
マクシム・デセール リサイタル
2015年11月10日 (火) 19:00開演
場所:ポワンキュルチュール、ブリュッセル
チケット:5ユーロ

プログラム:
K. ペンデレツキ : カデンツァ
E. カーター : Fragment 4
C. トゥーラン : ἐπαıνέω (épaïnéô) 世界初演
P. エルサン : ラ・パヴァーヌ
G. リゲティ : 無伴奏ヴィオラ・ソナタより一楽章
松宮圭太(作曲・会員) : 奇想曲(ハイブリッド・ヴィオラへの改作初演、ベルギー初演)

演奏:
ヴィオラ  マクシム・デセール

詳細 :




カルチエミュジコ
ヴァイオリン、チェロ&ピアノ
トリオコンセール
~フランス風ピアノトリオのあたらしいかたち
2015年11月21日(土)19:00 開演
杉並公会堂 小ホール(JR中央線/総武線、メトロ丸ノ内線「
荻窪」駅)
チケット:一般  3000円、学生  2000円、児童・中高生 1000円、未就学児  100円(全席自由)
パスリゾーム・会員  各500円引

プログラム:
G・フィンズィ:トリオ  ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための (1975)  
M=A・ダルバヴィ:トリオ第1番  ヴァイオリン、チェロとピアノのための  (2008) 
P・エルサン:トリオ  マラン・マレ 〈聖ジュヌヴィエーヴ・デュ・モンの鐘〉による変奏曲 (1998)
B・ジョラス:トリオ ヴァイオリン、チェロとピアノのための  (1988)

演奏:
ヴァイオリン  印田 千裕
チェロ  津留崎 直紀
ピアノ  石井 佑輔(会員)




日本の現代音楽をめぐって#2【優しき歌】

12月2日(水)18時30分開演
パリ日本文化会館 小ホール
住所 : 101Bis Quai Branly, 75015 Paris, France
(メトロ6番線 : M° Bir-Hakeim または RER C線 : Champ de Mars – Tour Eiffel駅)
電話 : +33 1 44 37 95 01
地図 : http://www.mcjp.fr/fr/informations-pratiques/venir-a-la-mcjp
チケット : 5 euros

プログラム :
河田文忠( 1938-2012 )優しき歌
林光( 1931- 2012 )四つの夕暮れの歌
八村義夫( 1938-1985 )彼岸花の幻想
網守将平(1990- )メゾ・ソプラノとピアノのための “Practice of chimeric movement on static syntax” (世界初演)
柴田南雄( 1916-1996 )立原道造の詩による「優しき歌」

演奏:
小林真理(メゾ・ソプラノ・名誉会員)
棚田文紀 ピアノ


http://afjmc.org/ja/autour-de-la-musique-japonaise-daujourdhui-2/



2015年11月2日月曜日

小林真理声楽マスタークラス 第5回開講告知 & 第4回報告

すっかり日仏現代音楽協会の恒例企画となりました、協会名誉会員でストラスブール音楽院教授の小林真理先生によるマスタークラス。好評にお応えして、第5回の開催が決定いたしました。日程は12月27, 28日の二日間です。古楽から現代作品に至る幅広いレパートリーにますます磨きのかかる小林先生は、国際的な演奏活動とともに各地での指導にも熱心に取り組まれています。世界中の生徒さんを惹きつけてやまない、小林先生のエネルギッシュなレッスン。この機会にぜひ間近でご体験ください。

講師プロフィール 
小林真理

鎌倉市生まれ。3歳よりピアノを始め、10歳より中村浩子女史に師事し声楽を学ぶ。
1979年東京芸術大学音楽学部声楽科を卒業、同大学院修士課程に進み、1981年文化放送音楽賞受賞、第1回日仏声楽コンクールに入選、フランス音楽をより深く学ぶために留学を決意し、1982年フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に入学、レジーヌ・クレスパン女史に師事、1987年同音学院のオペラ科を終了、1989年にはウィリアム・クリスティ氏の指導する同音学院の古典声楽科のクラスを1等賞を得て終了する。パリ国立高等音楽院に在籍中の1983年頃より数々の国際声楽コンクールにて受賞(1984年パリのフランス歌曲国際コンクールでフォーレ賞、1988年クレルモン・フェランのオラトリオ・リート国際コンクールではリタ・シュトライヒ・記念大賞)この頃よりバロックから現代音楽に至る幅広い演奏活動を始める。
1993年には その後進学した東京芸術大学博士課程において博士論文『オリヴィエ・メシアンの歌曲研究ーハラウイを中心にー』を書き、博士号を収得する。
コンサート活動においては ピエール・ブーレーズの指揮でシヤトレ劇場でハリソン・バートウィッスルの〔メリヂアン〕のフランス初演、フランス国立管弦楽団、フィルハーモニック・オーケストラと共演、オランダのコンセルトゲボー・ホールにてシェーンベルクの〔4つのオーケストラ歌曲作品22〕、佐渡裕指揮でオーケストラ・ラムルーとマーラーの交響曲第2番、現代音楽作曲家の初演は数多く、アンサンブル・アンテルコンタンポランと数度共演、ロストロポーヴィッチの指揮で小林真理のために書かれたピヨートル・モスの〔スターバート・マーテル〕、最近ではフィリップ・ルルーの新作をロレーヌ国立管弦楽団とフランスとドイツで初演、ヨーロッパのみでなく、アメリカ、東欧、オーストラリアにてもソリストとして活躍している。オペラの分野では ジェフリー・テート指揮によるベルクの〔ルル〕の女流工芸家役、プッチーニの〔蝶々夫人〕のスズキ役、モーツァルトの〔コシ・ファン・トゥッテ〕のドラベラ役、ヴィヴァルディの世界初演〔真実の証〕のルステーナ役などを演じている。
CD録音も多数に及び、モーツァルトの〔レクイエム〕、〔マニュエル・ロ-ゼンタール歌曲集〕、〔20世紀の作曲家の編曲による世界の民謡〕などがあり、最近では、フランスを代表するサクソフォン奏者、クロード・ドラングルとの〔japanese love songs〕、メシアンの〔ハラウィ〕などがある。
1999年にフランス国家教授資格を得て現在ストラスブール地方音楽院で声楽の専任教授を勤め、ニースのアカデミー他、各国でマスタークラスを行い、後進の指導にも情熱をそそいでいる。
倉敷の大原美術館のギャラリーコンサートに計3度出演した他、2013年にはフランスの各地でオーケストラとワーグナーの「ヴェーゼンドンクの歌曲」を数回歌い、同年10月25日には東京シティフィルとプーランクのオペラ「カルメル派修道女の対話」〔演奏会形式〕の修道院長の役を歌って好評を博した。
(当協会のホームページで小林真理さんへのインタビューを掲載しております。あわせてご覧下さいませ)




日時
12月27日(日)13時〜20時
12月28日(月)13時〜20時

会場
川崎市内の練習室(駅の近くです。メールにて地図をお送りいたします)

対象
受講生   
- 声楽を専門的に学ばれている方
- フランス歌曲やフランス語オペラを学ばれたい方
- 声楽分野でフランスへの留学を希望されている方
- フランスにおける声楽教育を体験されたい方
- 声楽の初心者やアマチュアで学ばれている方
聴講生
-専門的な知識の有無にかかわらず、興味のある方はどなたでもご見学可能です(事前に事務局へのお申し込みが必要です)。
-レッスンの妨げにならない範囲での入退場は自由です(お問い合わせいただいた方には、当日のタイムテーブルをお送りいたします)。

レッスン形式
- 原則としてお一人様1時間の個人レッスンとなります。お申し込みの際に、上記の日時内でご希望の時間帯をお知らせ下さい。お一人で2時間続けての受講や、2日間にわたって複数枠の受講も可能です。
- 受講曲目は自由です。2、3曲程度ご用意下さい。事前に講師ともご相談いただけます。
- 伴奏者はご自分でお連れいただくか、協会事務局からのご紹介も可能です(紹介の場合の奏者への謝礼は、1枠につき5,000円となります)。
-受講生は、会場の定員の範囲内で他の受講生のレッスンも自由にご見学いただけます。

参加費
-受講料 : 22,000円(複数枠をお申し込みの場合、2枠目からは各18,000円)
-聴講料 : 2,000円 (両日の場合は合わせて3,000円)

※受講料には当日練習用のスタジオ代が含まれます。伴奏合わせ、発声などにご利用ください。


お申し込み・お問い合わせ
日仏現代音楽協会事務局






*前回8月のマスタークラスに参加された佐藤千香さん、中村香織さんからメッセージが届いております。小林先生のレッスンの様子や留学時代のご経験など、たっぷりと綴っていただきました。




日仏現代音楽協会 小林真理先生マスタークラス  受講レポート

去る8月、川崎のスタジオにて小林真理先生のマスタークラスを受講させていただきました。普段はフランスでお忙しく、大活躍の真理先生。バカンス中の鎌倉の海でこんがり焼けた明るいお顔から、会場に着いてすぐエネルギーをいただきました。
真理先生のレッスンは、フランス歌曲、オペラ、バロックから現代まで、様々なジャンルを指導してくださいますが、なにを歌うにせよ、まずは体と声の一致を目指すところから始まります(体の落ち着く中心に、自然に声を沿わせる、というふうに私は感じています)。そして、そこを見つけられないうちは、大変な苦しさがありますが、とにかく探します。生徒と一緒に、先生も一生懸命、本当の声を探してくださいます。今回のレッスンも、柔軟な良く開いた体と声に、ことばの響きと表情を乗せて、さながら「英国王のスピーチ」のように丁寧に、また大胆にご指導下さいました。

私は2009年から2013年まで、ストラスブール地方音楽院の真理先生のクラスに学びました。とにかく早く上達したいということで頭も体も魂もカチカチで、正直なところ最初の何年間はなかなかうまくいきませんでした。泣いたり笑ったり色々と、東京よりずっと人間の感性が躍動的な地で、自然体で生きられるようになったころから、真理先生の仰ることが体にしゅしゅっと入っていき、歌うことが自由になりました。外国語の発音、発語は知れば知るほど大変なものですが、日本的な細かい、手の届くコントロールを頑張るよりも、真理先生が指導されている顔の筋肉いっぱいに柔らかく、広く使う、というようなアプローチの方が、ずっと声と音楽に結びつくと感じます。先生のいつも仰る「ハーモニーのある声」でしょうか。

歌うことに不自由を感じていて、でも自分の声でフランスものを歌いたいと願っている方。次回の真理先生のマスタークラス、おすすめします!


佐藤千香




8月末に日仏現代音楽協会主催の小林真理先生のマスタークラスを受講し、その時に必要な事柄を的確かつシンプルな表現でご教示頂きました。真理先生にお世話になりまして早7年が過ぎようとしていますが、そのご縁に心から感謝しています。留学から帰国して以来、年に数回の先生のレッスンで培ったことを手がかりに、自分自身で消化して演奏や教育に生かすように励んでいます。学生の時とは状況が変わり、演奏の内容だけでなくレッスンの受講の仕方も変わるのだなと改めて実感している今日この頃です。
 異国から母国の生活へと戻って気づくこともあり、留学で学んだ音楽研鑽を含めて、現地の日常生活から学んだことや経験を今後どのように生かせるだろうと思いを馳せながら、また音楽への熱い思いを抱いて世界に羽ばたく方々が今後さらに増えて、芸術が豊かに発展するよう願いながら、微力ですが私自身の経験について書かせて頂きたいと思います。

 私は、ドイツの国境沿いにあるフランス国立ストラスブール音楽院で3年間声楽を学ぶ機会に恵まれました。授業や演奏家ディプロム等を取得する中で、得意不得意に関わらずルネサンスから現代に至るまでの各様式の声楽スタイルを学べたこと、身体表現を授業やタップ・ダンスを通して体感できたことは、大きな財産となりました。また編成に関しても、ピアノと歌のみならず、声楽ソロ作品や少人数の声楽アンサンブル、オーケストラや室内楽(歌とフルート、ギターと歌、歌と打楽器ー歌手自身も打楽器を使用しながら歌う)での演奏など、日本では体験できない貴重な機会を得ることができました。学校の様々な企画演奏会や学外での演奏経験にも、とても感謝しています。
 音楽院在籍3年目には、ストラスブールから急行電車で1時間ほどにある、ドイツのザールブリュッケンにほど近いディーメリンゲン音楽舞踊学校の声楽講師として、8名の生徒に恵まれました。当時の鉄道は、労働者の年金問題でストライキが多数起きていたため、何度も生徒のお宅に泊めて頂いたり、仲間や近所の方々も参加して多くの方と食事を共にしたり、野いちごを摘んだり、自家製タルト・フランベ(アルザス地方の郷土料理)を作ったり、様々な事柄を話す多くの機会を持つことができました。周りに支えられながら何とか勤務ができた状況でしたが、現在も続く生徒やその家族、同僚と繋がりは心の財産となっています。 
 フランスに滞在して実感したのは、文化が保護され芸術が豊かに存在するということです。オペラやオーケストラの演奏会などは、様々な年齢層が気軽に楽しむことができますし、特に可能性溢れる子供たちも幼少から広く芸術を享受できることは素晴らしいと思います(以前、スティーブ・ライヒの打楽器作品の演奏会の休憩中に、5歳前後くらいの男の子たちが「Salut!」と挨拶し、楽しそうに作品について色々話しているのを見て、そのことを実感しました。また、市場の野菜売りのおじさんが、機嫌良くモーツアルトのオペラ「魔笛」の夜の女王のアリア、あの難しいメロディーを自在かつ音程も正確に口笛で吹いていた時には、仰天しました。)
 実際に現地で生活し肌身で感じることで、音楽や詩の世界を理解する糧となったことも多くあります。Forêt noire(黒い森)が何故黒いとされるのか?自然に畏敬の念を抱かせるものが、そこには確かにありました。そして、何故春にそれほどまでに喜びを感じ、待ちわびるのか?日本の冬晴れとはほど遠い曇り空が続く冬、その対比としての暖炉の温もりや人との交流の温かさを知り、その長く暗い冬があるからこそ、哲学や内なるエネルギーから出でる音楽や詩などができたのではないか?と感じ、そして一気に訪れる春に驚きと喜びを皆で一杯に味わい、やがてイースターがやってくる。これらのことを経験した時に、今まではぼんやりとしていた西洋音楽の「春」が、ようやく自分自身で理解できました。多忙な中では味わえない五感の研ぎ澄まされた時間や、時の移り変わりを実感することで、人の幅は少しずつ広がるのではないかと感じています。
 物事には光と闇があり、白と黒の間のグレーの濃淡の中で、五感を開いてそこに在るということが、まず第一に大事だと考えています。過去から現在に至る歴史があり、考えの異なる民族・宗教、格差から生じる歪みなど、多くの問題が存在する中で今があるということを、与えられた(見出した)地で、感じて自ら動く。これも、かつて3度ドイツ領になった歴史があるストラスブールで経験できたことで、「郊外」と呼ばれる移民の多いエリアの格差を目の当たりにし、様々な人々がどのように共存して混沌の中でまとまっているかを現実に見てきたことで、帰国してからの物事の見方も変わってきたように思います。
 実際に留学するには、音楽研鑽の方法、手続き等の実務、費用など十人十色の問題があると思いますが、解決する方法は一つとはかぎらず、問題を打破する方法を多方面に模索することで、その糸口が見つかると私は考えています。
 帰国してからの今後につきましては、音楽を通して自ら芸術の力を体感できたその経験を生かしてまいりたい、演奏を通して皆さまと音楽の魅力を共に享受できるよう研鑽し、活動を続けていきたいと願っています。そのためには日本での現実の生活の中で、いかに自分自身の内側から心を養い、豊かに満たしていくかを意識することが大事だと思っています。人には気をつけないとすぐにエゴイスティックになる傾向が、自分も含めてあるからです。最近は、電車に乗ると座席の乗客のほとんどがスマートフォンを見たり、音楽を聴いたりしているのが珍しくありませんし、立ったまま音楽を聴きながらスマホを凝視している人は、後ろから人が乗車してきても気配を感じることができないという状況が起きています。それ自体が悪というよりも、大人数が存在していても互いに存在しない・見ないように接する、そんな不思議な感覚に危機感を持ちます。
 言葉のボキャブラリーもそうで、言葉は諸刃の剣ですから意識していないとすぐに枯渇します。さらに、教養は自分だけのためでなく、皆と共栄する潤滑油でもあると思っているので、未熟な中にも少しずつ身につけて心から豊かになれるよう、さらに音楽や文化、様々な美しいものが多くある世の中に在り、そんな世の中が続くよう願いながら、末筆とさせて頂きたいと思います。
 
中村香織